漱石のロンドン見聞録

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1900年10月28日、漱石は船でロンドンに到着し、 2年間の留学生活を始めた。その足取りをたどるTV番組がある。 NHK「1900年 漱石"霧の街"見聞録」で、最初2004年に放送された。 今年は漱石没後100年にあたり、漱石にまつわる番組が数多く放送された。 漱石の妻、鏡子を中心に描いた土曜ドラマ(主演:尾野真千子)も放送された。

漱石は2年間に5回も下宿先を替えている。最初の下宿は大英博物館やロンドン大学に近かったが、都心の一等地のため下宿代が高すぎた。1週42円、1日6円(現在の貨幣換算で29,000円)で、月180円になる。留学費用150円/月では生活できないため、安い下宿に引っ越さざるを得なかった。

2週間後に、下宿代が半分(1週20円)のところに引っ越した。大学や図書館に何時間もかけて歩かなければならなかった。ここに2ヶ月ほど住んだが、あまりにも不便なのでまた引っ越した。テムズ川の南岸地域で、当時移民や労働者階級の人たちが移り住んだ新興住宅地だった。下宿代はさらに安く、最初が1週42円だったのがその3分の1以下の12.5円だった。

その後さらに2回引っ越して、5番目の下宿先に落ち着いたのが1901年7月20日だった。ここで帰国(1902年12月4日)までの約1年半を過ごした。この下宿の斜め向かいに「漱石記念館」が建っている。下宿の漱石の部屋は永久保存されることになっているそうだ。

この番組制作の取材を通じて新たな発見があった。Dulwich Picture Galleryのサイン帳に漱石自筆の署名があるのが見つかったということだ。3番目の下宿から徒歩1時間のところにあるギャラリーである。

〔参照資料〕
2002年放送 ハイビジョンスペシャル 古地図で旅するヨーロッパ都市物語 ロンドン 1900年 漱石"霧の街"見聞録