春日大社 蘇った黄金の太刀

奈良・春日大社で、国宝中の国宝といわれる黄金の太刀の復元が進められた。日本各地から人間国宝級の職人が集結し、平安の名宝に秘められた高度な技と格闘した3年の記録。

春日大社は768年、藤原氏によって建造。経津主命(ふつぬしのみこと)を祀る本殿にあった御神宝、金地螺鈿毛抜型太刀は、昭和5年に国宝に指定され国が保管することになった。この太刀を御神殿に戻すのが春日大社の悲願であった。複製を作って奉納するという決断をし、3年前から復元に取り組んだ。

太刀の柄や鍔、鞘に金箔が使われていると考えられていた。復元するためのCTスキャン分析の結果、 全体の80%が純度の高い金1kgで作られていることがわかった。 太刀を奉納したのは藤原頼長(1120~1152)彼が猫好きだったため、太刀には猫の螺鈿絵が彫りこまれた。

刀匠 月山貞利 刀身74.3cm、厚さ6mmの刃を1ミリ以内の誤差で鍛錬するのは至難の業である。1ミリの誤差があると鞘に納まらなくなる。 刃艶(はづや)という砥石を1cm角に切ったもので研いでいく。

極細の魚子(なのこ)といわれる点が3万個打ち込まれている。集中力が必要なため作業は1日4時間が限界である。彫師は半年をかけて完成させた。

刀匠、彫金師、研師、漆工芸師など人間国宝級の名匠たちが取り組んだ復元プロジェクト。800年の時を経て、現代に蘇った太刀は、12月24日に本殿に奉納された。神の宝であり、人間の目に触れることがない。数百年、千年後にこの太刀は何を語りかけるのだろうか。