労働基準法に、1日8時間の制限が記載されている。しかし、例外事項として「36協定」、「特例」がある。労働組合と経営者が合意すれば、月45時間までの残業が認められる。さらに「特例」を定めれば、実質的に無制限の残業が認められるという実態がある。
24時間営業のコンビニや飲食店など便利なサービスの裏には、それを提供するために深夜も働いている人がいる。利便性を追求することが、長時間労働を生んでいるという側面がある。
長時間労働は、働く人の健康と命にかかわる問題であるとの認識が重要である。また、過労死は、長時間労働だけでなく、経営方針や組織風土、上司との人間関係、パワハラの問題も絡んでいる。
NHKスペシャルで、「これからの日本~長時間労働~」を放映していた。以下、番組内容である。
◇電通の新入社員だった女性の過労自殺などを受けて、改めて是正が求められる長時間労働。その解消は、少子化や人口減少時代の労働力確保などの課題にもつながる大問題!しかし日本の正社員の長時間労働の実態はこの20年全く変わらず、先進国最悪レベルが続く。解消を阻む壁は何?具体的な対策は?専門家と市民による徹底討論で探る。さらに視聴者の質問に専門家が生回答。長時間労働の解消に向けたヒントが盛りだくさん!
【ゲスト】デーブ・スペクター,ワーク・ライフバランス社長...小室淑恵,カンニング竹山,サントリーホールディングス社長...新浪剛史,壇蜜,日本総合研究所チーフエコノミスト...山田久,作家・演出家...鴻上尚史ほか
〔追記〕
電通の高橋まつりさん(当時24歳)が過労自殺してから1年が経った。 母、幸美さん(53)が命日に手記を公表し、「日本の働く人全ての人の意識が変わって欲しい」と訴えた。全文は以下の通り。
◇
まつりの命日を迎えました。
去年の12月25日クリスマス・イルミネーションできらきらしている東京の街を走って、警察署へ向かいました。嘘であってほしいと思いながら...。前日までは大好きな娘が暮らしている、大好きな東京でした。
あの日から私の時は止まり、未来も希望も失われてしまいました。息をするのも苦しい毎日でした。朝目覚めたら全て夢であってほしいと、いまも思い続けています。
まつりは、あの日どんなに辛かったか。人生の最後の数カ月がどんなに苦しかったか。
まつりはずっと頑張ってきました。就職活動のエントリーシートの自己PRの欄に、「逆境に対するストレスに強い」と書いていました。自分が困難な境遇にあっても絶望せずあきらめないで生きてきたからです。10歳の時に中学受験をすることを自分で決めた時から、夢に向かって努力し続けてきました。
凡才の私には娘を手助けできることは少なく、周囲の沢山の人が娘を応援してくれました。娘は、地域格差・教育格差・所得格差に時にはくじけそうになりながらも努力を続け、大学を卒業し就職しました。
〔娘が社会を変えた〕
電通に入ってからも、期待に応えようと手を抜くことなく仕事を続けたのだと思います。その結果、正常な判断ができないほどに追い詰められたのでしょう。あの時私が会社を辞めるようにもっと強く言えばよかった。母親なのにどうして娘を助けられなかったのか。後悔しかありません。
私の本当の望みは娘が生きていてくれることです。
まつりの死によって、世の中が大きく動いています。まつりの死が、日本の働き方を変えることに影響を与えているとしたら、まつりの24年間の生涯が日本を揺るがしたとしたら、それは、まつり自身の力かもしれないと思います。でも、まつりは、生きて社会に貢献できることを目指していたのです。そう思うと悲しくて悔しくてなりません。
人は、自分や家族の幸せのために、働いているのだと思います。仕事のために不幸になったり、命を落とすことはあってはなりません。
まつりは、毎晩遅くまで皆が働いている職場の異常さを指して、「会社の深夜の仕事が、東京の夜景をつくっている」と話していました。
〔本当の労働改革を〕
まつりの死は長時間労働が原因であると認定された後になって、会社は、夜10時以降消灯をしているとのことですが、決して見せかけではなく、本当の改革、労働環境の改革を実行してもらいたいと思います。
形のうえで制度をつくっても、人間の心が変わらなければ改革は実行できません。会社の役員や管理職の方々は、まつりの死に対して、心から反省をして、二度と犠牲者が出ないよう、決意していただきたいと思います。
そして社員全ての人が、伝統を重んじることにとらわれることなく、改善に向かってほしいと思います。
日本の働く人全ての人の意識が変わってほしいと思います。
◇NHK News Webより 〔~〕は補足