イギリスの国民投票でEU離脱が決まった。途端に円高株安傾向に転じた。EU各国のEU離脱の動きが活発になるかもしれない。世界経済に悪影響を及ぼすことだろう。
地域別に見るとスコットランドは残留、イングランドは離脱という結果だった。世代別では65歳以上は60%が離脱派に対し、18~24歳の若い世代では73%が残留を望んでいる。高学歴者(大卒以上)、中級管理者以上の層では、残留支持が多く、それぞれ71%、60%になっている。逆に義務教育終了レベル、単純労働者・失業者は、離脱支持のほうが多い。移民問題が争点になれば当然の帰結であろう。
この結果を受け、スコットランド独立運動が最加速するかもしれない。民族主義、ナショナリズムの傾向が加速するのではないかと危惧される。アメリカ大統領選でのトランプ候補は明らかに最右翼の過激な国粋主義者である。EUに好意的でない国民の比率が高いフランスやギリシャなどのEU離脱への動きもでてくるかもしれない。
経済・軍事・政治のグローバライゼーションへの反動が噴出しているようだ。グローバルに事業を展開するイギリス企業、英国に拠点を置く日系企業などは当然のことながらEU離脱に反対である。イギリスへの投資から撤退する企業も出てくるだろう。
政治・経済の先頭に立つ人や世界を見つめる知識人は、EU離脱を歓迎しない。しかし、一般のイギリス国民にとってはグローバライゼーションには実感がない。大量の移民が流入し、自分たちの仕事を奪われているという実感のほうが切実である。
イギリスもアメリカも国民は自分が大事、移民拒否の考え方に傾き、寛容の精神を失いつつあるように見える。日本社会も寛容さを失ったという意見がある。各国が自国のことしか考えないようになったら世界秩序は壊れていき、紛争やテロが増えることになりかねない。繁栄と平和の危機に直面しているというのは言いすぎであろうか?