柿の原産地は東アジアで、ヨーロッパやアメリカへは日本から伝わったため学名は「KAKI」と記される。品種は1000種近くあるといわれる。甘柿と渋柿に大別できるが、甘柿の種類は非常に少なく、20種くらいしかない。今日、甘柿の代表が富有柿で、渋柿の代表は「平核無(ひらたねなし)」で、それぞれ80%を占める。
全国各地で栽培されるが、栽培面積、生産量ともに和歌山県が全国一位(農林水産省-H22全国のかき生産量ランキング)で、奈良県、福岡県が続く。
富有柿
甘柿の代表的なものが富有柿で、全体の80%を占める。生産地は奈良県(21%)、福岡県(16%)、岐阜県(15%)の順(平成22年度果樹生産動態調査)である。岐阜県が富有柿発祥の地とされているが、元は御所柿(奈良県御所市原産)である。1857年に瑞穂市居倉小倉初衛が御所柿の栽培を始めたのが起源で、「居倉御所」と呼ばれていた。福島才治が、これを別の木に接木して育成したものが「富有柿」と名づけられて、1898年の柿品評会に出品したことで世に広く知られるようになった。
幻の柿「御所柿」
富有柿の親とも言える「御所柿」は、甘柿のルーツで「五所柿」や「やまとがき」、「ひらがき」などとも呼ばれている。江戸時代には盛んに栽培され、極上の柿として、幕府や宮中にも献上されていた。もともと栽培が難しく、明治以降富有柿などに切り替えられていき、近年では「幻の柿」とまでいわれるようになっていた。
2014年頃だったと思うが、縄文・弥生遺跡の現地説明会や日本武尊の白鳥陵に行ったときに聞いた話では、御所市は御所柿の復興に取り組み始めた。わずかであるが大阪中央卸市場に出荷されるようになった。
御所柿の派生品種に「花御所柿」がある。郡家町「花」の農民・野田五郎助が、奈良県から御所柿の枝を持ち帰って渋柿に接木したのが始まりといわれる。当時は「五郎助柿」と呼ばれていたが、「花」というところで作られている「御所柿」ということで「花御所柿」になったという。今は鳥取県の特産品になっている。
不思議なことに、鳥取県の東部、因幡地方にのみ栽培され、しかもその9割が「郡家町」というところで栽培されている。さらに品質の良い花御所柿は、旧「大御門村(おおみかど村)」内で、発祥の地「花」をはじめ、「大門」「西御門」、「殿」、「市の谷」などなにかしら由来のありそうな地名のところばかりである。なぜ限られた地区でしか良いものがとれないのか詳しいことは分からない。
渋柿
渋柿(平核無柿、刀根早生柿)の栽培が最も多いのは、和歌山県である。平核無柿の原産は新潟県であるが、山形県と和歌山県が2大産地になっており、2県で54%を占める。平核無柿の派生品種である刀根早生柿の52%は和歌山産である。
奈良県天理市の刀根淑民氏が台風で折れた平核無柿を、その根元から顔を出した若木に接木して育成したところ、普通の平核無柿より10~15日ほど早く実をつける柿になった。それを育成し1980年に品種登録されたのが刀根早生柿である。