100歳以上の人のことを英語で Centenarian という。NHKはセンテナリアンといい、またしてもカタカナ英語を使っているが、今夜放送された「徹底解明 100歳の世界」は興味深い内容だった。
田谷きみさん(101)は、いまも現役で毎日店に立つ和菓子屋の看板娘である。営業は朝8時から夕方6時まで、一日10時間。接客からレジ打ちまで、ほとんどすべてを田谷さんが担っている。健康長寿の秘訣はどこにあるのか。食事は一日三回、いつも決まった時間に食べる。野菜を使った料理を中心に何でも好き嫌いなしに完食する。
長寿の秘密解明に挑んでいる慶応大学の広瀬さんはこれまでに800人を超えるセンテナリアンを調査してきた。血液検査や認知機能の測定などあらゆる角度から探っている。田谷さんの測定データを解析した結果、一般高齢者とは顕著に異なる特徴が見つかった。
炎症レベル
体の中で起きている炎症の度合いである。田谷さんの炎症レベル(CRP)は、一般の人(基準値3.0)と比べて10分の1の0.03であることが分かった。炎症には急性炎症と慢性炎症がある。前者は怪我をしたときに腫れ上がるなど、病原菌などから体を守るために起こる一時的な炎症である。慢性炎症は、だれでも加齢とともに徐々に進む炎症で、自覚症状はほとんどない。田谷さんは、この慢性炎症が極めて低く抑えられていた。
高齢者の病理学的研究から、慢性炎症が与える影響が明らかになってきた。慶応大学では1500人を対象に最大10年間追跡調査を行い、何が寿命に関係しているのかを研究してきた。炎症、造血能、肝機能、代謝などを分析した結果、唯一寿命との関わりが見られたのが慢性炎症である。慢性炎症が低い人ほど健康寿命が長いことが分かった。
慢性炎症が進むことにより、細胞の老化や免疫力の低下につながり、それが糖尿病、動脈硬化、肺疾患、心不全などさまざまな病気にかかわっていることは明白になっている。
健康長寿の要因
デンマークで行われた同じ遺伝子を持った双子の研究では、10万組の双子を生涯にわたって追跡調査した。その結果、寿命を決めるのは遺伝的要因が25%、その他の環境要因が75%であることが明らかになった。遺伝子だけが運命を決めるわけではなく、誰もが健康長寿を実現できる可能性がある。