100分de名著3月2日~3月23日は「司馬遼太郎スペシャル」。「竜馬がゆく」や「坂の上の雲」をはじめ数々の歴史小説を生み出した司馬遼太郎が亡くなって20年が経つ。司馬が書こうとして書けなかったのは「昭和」の小説だった。自らの戦争体験が背景にあったからだ。「どうして日本人はこんなに馬鹿になったのだろう」という思いがあった司馬は、不幸な戦争を招いた理由を、歴史を紐解くことで見つけようとした。
指南役は、「武士の家計簿」の著者として知られる歴史学者、磯田道史氏。同氏は、司馬の意図を浮き彫りにするために、時代ごとに4作品を選んだ。
- 『国盗り物語』~「戦国」から読み解く変革力
- 『花神』~「幕末」に学ぶリーダーの条件
- 『「明治」という国家』~「明治」という名の理想
- 『この国のかたち』~「鬼胎の時代」の謎
第一回は、戦国時代を描いた「国盗り物語」から、時代を変革するには何が必要かを読み解く。この小説では、織田信長、明智光秀、豊臣秀吉、徳川家康という傑出した才能が活躍する。全ての人間を機能として冷徹に利用した合理主義者・信長。その人間くささが「人を動かす力」になった秀吉。こうかつにその権力を制度化した家康。彼らの生き様から司馬の「日本人観」がみえてくる。戦国の英雄たちの姿から、司馬の「日本人観」や時代を動かす「変革力」を読み解いていく。
第二回は、大村の生き方から理想のリーダーの在り方を読み解いていく。蘭学にとりつかれやがて村の医師となる村田蔵六、後の大村益次郎は、桂小五郎に見いだされ長州藩の軍事部門を任されて数々の戦果をあげる。その後、時代から魅入られたように官軍の総司令官、そしてついには明治政府の兵部大輔にまでのぼりつめた。大村の天才的なリーダーシップの源は「徹底的な合理主義」と「自分を勘定にいれない客観性」にある。
第三回は、江戸と明治をつなぐ歴史観を読み解き、幕末から明治への新国家建設の理想を浮き彫りにする。短期間のうちに国民国家の土台を築いた世界にも稀(まれ)な革命「明治維新」。これほどの偉業が成し遂げられたのは、欧米列強のアジア進出に「日本人が共有していた危機意識のおかげ」だった。明治は「格調の高い精神でささえられたリアリズム」の時代で、そこに生まれた「明治国家」は、江戸260年の精神遺産だったという。