松本峠は熊野市駅と大泊駅の間にある山を越える道で、海側にせり出したところが鬼ヶ城だ。国指定の天然記念物で2004年に世界遺産の一部として登録された。志摩半島から続くリアス式海岸の最南端で、熊野市駅近くからなだらかな海岸に変わる。「七里御浜」と呼ぶ。このことは、後になって知った。鬼ヶ城のことはまったく知らなかった。成り行きで歩くことになったのだが、新しい発見があって幸運だった。
13時50分に大泊で下車した。お目当ては松本峠を歩くこと。新宮の観光案内の人も歩いたそうだが、昼食・休憩を含めて2~3時間だったという。最初の登りはちょっときついが、小辺路・果無峠への最初の登りに比べれば楽だったし、距離も1キロ以内で短かった。15分ほどで峠に着いた。
峠からそのまま下ると七里御浜、熊野市駅に至る。左へ尾根伝いに行くと鬼ヶ城山頂だ。途中に東屋(展望台)があった。熊野灘、七里御浜、熊野市街が一望できた。誰もいない。太陽の位置が悪く、七里御浜が影になっていた。もう少し西へ移動するといい写真になるのではないかと20分ほど待ったが無理だった。諦めて鬼ヶ城山頂に向かった。
そこは熊野灘の荒波に面する断崖絶壁の真上だった。昔は城郭があったのだろうが、いまは何もない。小さな運動場くらいの広さの平地になっていた。城跡から海にせり出すような場所がある。「鬼の見晴台」と名づけた展望台になっている。雄大な熊野灘の展望を楽しめた。このときは何も知らなかったが、この真下が天然記念物で世界遺産に登録された「鬼ヶ城」という景勝地だった。