松江駅から宍道湖まで観光地を周遊する「ぐるっと松江レイクライン」(運賃200円)が走っている。社内アナウンスはちょっとした名物。その声は松江出身の俳優、佐野史郎である。
松江城開府の祖は、堀尾吉晴(1544-1611).。屋根が羽を広げたように見えることから、別名"千鳥城"と呼ばれる。五層六階、木造黒塗りの威風ある城である。近年の発掘調査で二枚の祈祷札が発見されたことで築造時期が明らかになったことから、平成27年に国宝に指定された。石垣にあるハート型の石を見つけると、幸運を呼ぶと言われる。
松江城のお堀を巡る「ぐるっと松江堀川めぐり」遊覧コースがある。一周50分で、乗船料は1230円。櫓炬燵を使った屋形船は冬の風物詩になっている。この遊覧の醍醐味は、17ある橋をくぐるとき。低い橋のときは舟の屋根が下がる。船上から眺める松江城天守は絵になる。堀川沿いに立ち並ぶ武家屋敷一帯は「塩見縄手」という。川沿いの歩道をまたぎ松の古木があり、「くぐり松」と呼ばれる。この木の幹にもハート型があり、縁に恵まれる。
松江の文豪といえば、小泉八雲(1850-1904)を思い出す。「日本の面影」、「怪談」などを著わしたイギリス生れの作家、ラフカディオ・ハーンである。元松江藩士の娘と結婚、松江をこよなく愛し、松江でその生涯を閉じた。小泉八雲の旧居(入館料300円)が残されている。英語教師として働きながら、日本の伝統文化や風物の魅力を海外に紹介し、ついには日本に帰化し小泉八雲となった。彼を虜にした美しい水の都、松江を象徴するのが夕日の絶景で有名な宍道湖である。
山陰本線で松江から二駅行くと玉造温泉がある。開湯は奈良時代という歴史ある温泉で、昔から勾玉(古代の魔除け)などを作っていたことから「玉造」という地名になった。
旧暦の10月、全国の神様が稲佐の浜を通って出雲大社に集まる。だから「神無月」のことを島根では「神在月」という。稲佐の浜の砂を、出雲大社に納めるといいことがあるといわれる。八百万の神が通る「神迎の道」を20分ほど歩くと出雲大社に着く。
下り参道を120mほど下ったところに心身を清める祓社がある。そこからは樹齢400年の松並木が続く参道になる。真ん中の参詣道は皇族だけが通れる。一般客は左右の道を通る決まりになっている。日本最古の銅鳥居から先が出雲大社の境内になっている。拝殿を横目に見てまっすぐ進むと、1744年に建立された御本殿に着く。高さ24mは神社建築の中では日本一といわれ、厚い桧皮葺の屋根が荘厳なたたずまいを醸し出している。
本殿の裏に行くと、スサノオノミコトを祀った素鵞社(そがのやしろ)がある。稲佐の浜の砂をここに奉納し、社で清められた砂を持ち帰ると厄除けになると古くから伝えられている。
出雲は「ぜんざい」発祥の地といわれる。神在(じんざい)が変化して「ぜんざい」になったというが、本当かな?
バスで25分ほど北西へ行くと、赤い社殿が美しい日御碕神社がある。この神社は、伊勢神宮が日の本の昼を守るのに対して、夜を守る勅命を受けたといわれ、「日沈みの宮」とも呼ばれる。坂道を上っていくと、日本海に沈む神々しい夕日の絶景が見られる。
出雲市駅から東へ向かい、荘原駅で下車。南へ徒歩20分のところに湯の川温泉がある。大国主大神を慕って旅をしてきた八上姫が旅の疲れを癒したといわれる湯。湯に浸かるとより美しくなったという神話が残る。
山陰本線で西へおよそ1時間、温泉津(ゆのつ)駅で下車。世界遺産「石見銀山」への玄関口で、温泉津も登録されている。開湯は1300年前という歴史ある温泉地である。過日、大阪造幣局の職員の方が、「石見銀山を訪ねたら、温泉津に泊まるのがお勧めです」と教えてくれた。
龍御前神社では毎週土曜の夜に、この地方に伝わる石見神楽という伝統芸能を見ることができる。古事記・日本書紀の神話を題材にした舞で、室町時代から伝わる。絢爛な衣装とテンポの速い力強い舞が特徴である。夜神楽定期公演:夜8時~9時。拝観料500円。
日本海に臨む琴ケ浜の砂浜には平家のお姫様の悲しい伝説が残る。この砂浜は、若くして亡くなった琴姫がつま弾く琴の音が響くといわれる。それが鳴り砂。