森本池は、農業用水を溜めておくために作られた人口の池である。こうした池の数で、奈良県は香川県に次ぐ全国第二位だと聞いた。
この池の名前は、私財を投じた篤志家の森本幸吉に由来している。春が過ぎると田植えの準備に合わせて池には水が溜められ、夏が過ぎたころから水量が減っていく。昔は、夏の真っ盛りには子供たちの格好の水遊びの場だった。
9月中旬頃だろうか、水量が僅かになると村人が一間四方の大きな網で池の小魚を獲る。モロコと呼んでいた。辞書によると本モロコとタモロコがいるそうだ。多分タモロコの稚魚、体長数センチのシラスの一種で、塩ゆでにして干すとチリメンジャコになるものだろう。釜ゆでにして卵とじにして食べた。夏の終わりの風物詩だった。
この池は実家と最寄りの駅の中間地点にあり、周辺に実家の田畑が点在している。柿畑だったり、イチゴや梨の畑だったり、秋ナスの栽培地だったりしたが米作が一番多かった。
写真は池の南端から北東方向を撮ったものだ。遠くに奈良公園の若草山が見える。その右手は柳生街道で伊賀上野に通じる。東の山なみを南北に走るのが山の辺の道で日本最古の神社、大神神社がある三輪山が近い。写真の右手後方に目をやると大和三山(耳成山・天の香具山・畝傍山)が見える。自転車で30分の距離だ。高校に毎日通った記憶がよみがえってくる。