日本でアイドルという言葉が使われるようになったのは昭和40年代、家庭にテレビが普及してからである。 それまでは、人気芸能人は「スター」と呼ばれていた。その大半が映画俳優で、特に加山雄三、吉永小百合、浜田光夫らは「青春スター」と呼ばれた。 女性では、美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみの「三人娘」、団塊世代では、中尾ミエ、伊東ゆかり、園まりから成る「スパーク3人娘(ナベプロ三人娘)」らが人気を博した。
アメリカでは、IDOLという言葉も使われていたが、「セックスシンボル(sex symbol)」という呼び方が一般的だった時代でもある。 セックスシンボルとは、性的魅力によって人気を得る人物のことで、 古くはマリリン・モンロー、エルヴィス・プレスリーが有名である。その後は、マドンナ、マイケル・ジャクソンなど音楽界の人物が多く、モデル界では ブリジット・バルドー、パリス・ヒルトンなどが有名である。
日本においては銀幕のスターの時代から、テレビの時代になって一大ブームを起こしたのが、 いうまでもなく「アグネス・ラム」である。「伝説のアイドル」といわれ、元祖グラビア・アイドル的な存在である。 アグネス・ラム現象が起きた背景には、「エマニュエル夫人」(1974)の影響もあったのか、 性的な魅力を売ることに対する抵抗が薄れていく風潮になっていたからかもしれない。
1960年代に、産業としての映画が衰退し、本格的なテレビ時代が到来する過程で、 次第に「スター」の呼称が使われなくなり、「アイドル」の呼称に取って代わられるようになった。 「三人娘」は映画スターであったが、「ナベプロ三人娘」はテレビ時代の歌手である。映画からテレビへ社会の構造が変化した象徴でもある。 ナベプロ以降に登場したのはすべて「歌手アイドル」であるといってよい。アイドル=歌手ということだ。
1972年デビューのキャンディーズや新三人娘(小柳ルミ子・南沙織・天地真理)らがアイドルの源流とされる。 その後、森昌子、桜田淳子、山口百恵から成る「花の中三トリオ」やピンク・レディー(『スター誕生!』)、 松田聖子や国生さゆり、工藤静香(「ミスセブンティーンコンテスト」)ら、後の人気アイドルが輩出した。
1980年代に入り、松田聖子・小泉今日子・中森明菜ら若年層に向けたポップスを主とする歌手が活躍を始め、 「アイドル」の呼称が市民権を得るようになったといわれるが、この頃の私は日本にいなかったためその実態は知らない。
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