多細胞生物はガンになる宿命を持っている。ヒトは動物の中でもっともガンになりやすい。
ガンの死亡率は、チンパンジーが2%に対しヒトは30%(日本人)である。ヒトとチンパンジーの遺伝子の違いは1%。その違いのひとつが精子の遺伝子。ヒトが獲得した精子の増殖機能がガンに利用されるようになった。それはヒトがチンパンジーから分かれて進化をはじめた700万年前に起こった。二足歩行をきっかけにメスが繁殖戦略を変えたことにある。オスはいつでも交尾できるように精子を作り続けるように進化した。その仕組みをがんが利用した。
FAS(酵素)が脂肪酸をつくり増大させる物質だと分かった。これが脳の巨大化を促した。しかし同時にガンのリスクも増大した。がんがFASを使って増殖していることが分かった。人類は知性獲得と引き換えにがんのリスクを増大させた。
夜間勤務の看護士のがんになるリスクは2.9倍であることもわかっている。これはメラトニンが少ないため。メラトニンががんの増殖を抑制する働きがある。男の前立腺がんは夜間勤務者に多く、日中勤務者の3倍のリスクがある。日本では5人に1人が夜間勤務者である。
がん細胞が増殖に利用するFASだけを破壊する薬で、その有効性が実験で証明された。