2015年夏。ワシントンで展覧会が開かれ注目を集めた日本人画家がいた。国吉康雄。20世紀初め海を渡り、ニューヨークで活躍した。没後60年以上をへて、なぜいま?
もの憂げな表情が印象的な代表作「もの思う女」。世界恐慌に揺れるニューヨークで描かれた。はかなげだが強い意志を秘めた女性の姿は、不安を抱えて生きる人々の心をつかんだ。国吉は底辺で生きる人たちを柔らかな筆遣いでとらえ、全米の美術館が選ぶ画家トップ3にも入った。人種差別、太平洋戦争...。その絵には計り知れない苦難が刻まれていた。アメリカの影を背負いながら描き続けた国吉。時代や国を越える魅力を探る。