なつかしの彼女

At Sheraton San Jose


 この週末に一週間分の出張報告を書こうと思って机に向かったが、仕事をする気がまだ起こらず、こうして雑文を書いている。昨夜は、二年前に会ったきりの友人に連絡をとり夕食を共にした。Monterey Whaling Companyという名前の Seafood専門の店に行った。


 僕は、Lobster Tailの蒸し焼き、彼女は King Salmonの何とか料理。もちろん前菜には好物のFried CalamariとNew England Clam Chowder、そして、BeringerのCabernet Sauvignon....。静かな音楽が流れる。ほの暗いレストラン....。ワインを飲みながら、彼女との話がはずむ....。な〜んて書くとRomantic and Intimateな感じになんてしまうけど、残念ながら、そんな雰囲気じゃないんだよね。あくまでも友人同士の楽しいおしゃべり。


 「彼女」といったって、実際は僕より少し若い「おばさん」(これは彼女には内緒(笑)アメリカでは差別用語。もっともそんな英単語はないが)Lelaという発音のしにくい名前で、底抜けに明るい人である。僕がアメリカにいたときの人事課長で、アメリカでの人事問題について言葉に言い尽くせないほど、いろいろ世話になり教えてもらった人である。若くして結婚し、一児を得る。そして離婚。子育てと、寝たきりの母親の面倒を見ながらキャリアウーマンとしての道を歩む。僕が尊敬する人間の一人である。


 夕食を終えた帰り道、ワインの酔いを覚ますために、彼女は僕のホテルの部屋に寄る。部屋にあるコーヒーメーカで熱いコーヒーを煎れる。真夜中12時を過ぎている。


We trust each other. Nothing happened...!?

San Francisco

 午前中のNovell社との打合せが長引き、予約していたフライト時刻ぎりぎりとなった。Dallas空港でレンタカーを返却し、ターミナルまでのシャトルバスに乗ったのが12時50分。フライトは11分後のSan Francisco 行き13時01分発のAA1037便。ゲートまで約15分かかる。ほとんど諦めていたが、よく遅れることがあるので取り合えずゲートへ直行。


13時05分、まだゲートが開いていた!3分後の13時08分発に変更になっていた。"I am so lucky guy !" と叫びながら駆け込む。搭乗案内の女性がにっこり微笑んで迎えてくれる。


 サンフランシスコ空港でレンタカーを借り、101号線を南へと走る。約35分で、週末を過ごすSheraton San Jose に到着。Sheraton Club Goldメンバーの特典で、広いSuite Roomを確保。一泊79ドルと格安だが、Queen size の大きなベッドが二つもありベランダも付いているのは勿体ない気がする。


部屋は、プール、噴水、滝、そして風になびく椰子の木を配した南国風の庭園に面している。窓を開けると滝の流れる音が爽やかに聞こえてくる。子供たちがプールではしゃいでいる。

Dallasにて想う

 ここDallasにもいくつか思い出がある。空港からホテルへ走る。太陽が沈むにはまだ時間がある。懐かしい思いがこみ上げてくる。ちょっと寄り道をしようと思い、町中から郊外へと走る。30分も走るとそこは大草原。360度地平線が見える所にでる。時あたかも太陽が真っ赤に染まって、地平線の彼方に沈んでいった。


そんな光景を目の当たりにしていると、大自然の暖かみが身近に感じられ、生きる喜びと勇気が満ちてくる思いがする。せせこましい仕事を忘れ、都会を抜け出して、自然の中を彷徨する旅に出掛けたい衝動にかられる。


 一度沈んだ太陽が、いま顔を出そうとしているような錯覚にとらわれ、青春時代の象徴的言葉を懐かしく思い出す。


    「若者よ、夜明けとともに旅に出よう」

阿修羅の旅

Dallas, Texas
 今日、Dallasに入った。"Kempinski"という変わった名前のホテルに泊まる。ドイツの由緒あるホテルのひとつだそうで、テキサス好みの豪華さである。この一室に落ち着いて、日本を離れてからの目まぐるしい旅を思い出している。



Sunday 20  From Narita to London  
 成田を発ちイギリスに入る。 飛行時間は13時間55分。 英国航空を利用した。各座席の前に7インチ位の大きさの液晶TVがついている。最新のハリウッド映画、コメディ映画、ニュース番組、懐かしの映画、スポーツ番組など合計8チャネルあり、自分の好きな番組が自由に見られる。約14時間の飛行時間が気になるどころか、眠る時間も忘れて、一年分の映画を見た!? Sylvester Stalone主演のCliff Hunger, Anthony Hopkins主演Remains Of The Day, 中世の十字騎士を描いたMusketeers, 女性に圧倒的人気のあるRichard Geer主演のMr.Jones(だったかな?)などなど。


 飛行機の中で出張の準備をしようと思っていたが全く手つかず、かつ寝不足!? ロンドン現地時間で夕刻に到着した。さすがに疲れが出て、早々と8時過ぎにベッドに入った。途中目を覚ますことなく、翌日8時までぐっすり眠った。12時間!も眠ると、目はパッチリ開いて元気溌剌となる。


Monday 21  Six Meetings  
 顧客4社を訪問し、加えてICL/FELの人間とも会って、それぞれ短時間ではあったが、効率的に用件を済ますことができた。その夜は、往年の名画「My Fair Lady」の舞台となった有名なAscot競馬場にあるイタリアンの店で夕食。 特別に注文したエンジェルヘアにミートソースをかけた特製のパスタを満悦した。


Tuesday 22  From London to New York 
 朝6時起床。ロンドンLHR空港8時30分発の飛行機でニューヨークへ飛ぶ。飛行時間約8時間。JFK空港でレンタカーを借り、北へ車で約50分走ると、海と丘に囲まれた町Stamfordがある。昼過ぎに着き、早速仕事開始。


Wednesday 23 From New York to Houston  
 夕刻、JFK経由でテキサス州Houstonに移動。飛行時間4時間。 ニューヨークはまだ肌寒い気候であったが、ここはもう蒸し暑い夏のような気候である。Sheraton Astrodome泊。ただ寝るだけの宿。


Thursday 24 From Houston to Dallas 
 午前、NASA Johnson Space Center訪問。Gary Wardとbreakfast meeting。NASAでのDTC利用状況と今後の予定を聞く。 何年振りかで訪れた思い出のHoustonではあるが、感傷にひたっている時間はない。まぶしく暖かい太陽の日差しに残る未練をふりきってDallas行きに飛び乗る。



 ……というわけで、今日Dallasのホテルに落ち着き、明日の仕事の準備を完了。 少し時間ができたのでベッドに入る前のひとときを駄文を書くことで費やしている。明日は、午前中にNovell社と打合せをして、午後にはSan Franciscoに移動という目まぐるしい日程である。

はじめに

 この小冊子は、海外出張中の合間にホテルや飛行機の中で徒然なるままに書き綴った旅日記をまとめたものである。この私の旅は、月の3/4をホテルと飛行機の中で睡眠をとり、昼夜の別なく働く生活が一年以上続いた。それは、阿修羅の如き旅であった。緊張と苦悩と悲哀が複雑に入り交じった長い戦いの日々を、時空を越えて過ごしてきた。


 朝はニューヨークで仕事、夕刻にロンドンに向けて発つ。飛行機の中で軽い夕食をとって数時間眠るとヒースロー空港に到着。ニューヨーク時間で真夜中の2時だが、ロンドンは翌日の朝7時。ホテルにチェックインしてシャワーを浴び、背広に着替えて9時からの仕事を開始。行く先々のホテルやオフィスでいくつかのFAXや伝言が待ち構えており、くつろぐ間もなく電話をかけまくりFAXや電子メールの返信を出す。経営方針の決定、開発・営業部隊との会議、世界の顧客訪問、協力企業との提携折衝・契約、訴訟対策……


 そんな出張の連続であった。海外出張中の仕事は昼夜を問わず、時間と空間の壁を乗り越えなければ成り立たない。しかし、そんな生活が続けば、健康に自信のある私でもいつかはプッツリと切れる危険を承知している。


 息抜きも必要である。機会があれば時と場所を問わずに睡眠を貪り、好きな本を読み、その土地の名所旧跡を訪ねる。ときには偶然立ち寄った小さな村のパブの親父さんと世間話に興ずる。自分なりにリラックスし、気がつかないうちに溜まっているストレスを解消するための時間を割く。家族への絵はがきや親しい友人への電子メールも気分転換のひとつである。


 旅の途中で心に残るなにかがあると、仕事で持ち歩いていたNoteBook(その後Pocket2)を叩いた。親しい友人への旅先からの便りだったり、仕事の連絡・依頼の電子メールを送るついでに、ちょっとした話題を追加したりしていた。そのうちに、そんなメールを自分自身の旅の記録として残しておこうと思うようにもなった。特定の人を意識したメールは、普通オンラインで一気に書いて送っており、手元に写しが残ってないものもある。途中から、できるだけ残すようにして、あとからそれを旅日記風に一人称で書き直したり、である調に編集したものが文書ファイルに溜まってきた。


 そんな雑文をひとつにまとめたのがこの小冊子である。一瞥して興味がなければゴミ箱に捨てていただいて結構である。欧米の文化や社会情勢、時の話題など種々雑多で、なんの一貫性もテーマもない。つまらぬ随筆とでも思って気楽に眺めていただければ幸いである。

白い雲

おお見よ、白い雲は
また忘れられた美しい歌の
かすかなメロディーのように
青い空をかなたへ漂って行く。
長い旅路にあって
さすらいの悲しみと喜びを
味わいつくしたものでなければ
あの雲の心はわからない。
ただ目的だけをせわしなく求める目には、
さすらいの甘さはついには味わわれない。

この詩の甘さのなかに、すべての人間に共通する青春への郷愁がある。
しかし、わたしの旅の心は「漂泊」であった。緊張と不安に満ちた旅であった。