用宗散策

焼津を過ぎたころ雨は小降りになった。満開の桜と山が見えたので、急遽飛び降りた。傘をさしながら電車と桜の写真を撮ったあと、用宗海岸まで歩く。駿河湾の海が広がっていた。晴れていれば、伊豆半島、富士山が見えるだろうと想像をめぐらす。緑道で精悍なグレイハウンドに出会い、波止場で出会った二人組と言葉を交わし、用宗港でシラスを堪能した。

流れ行く車窓の風景を眺めながら散策したい場所を探す。それが電車で移動するときの旅のスタイルだ。島田から静岡、沼津、三島は市街地が続く。興津まで行って海を眺めてから帰るかなあ~と考えていたらトンネルに入った。抜けると山が近くだった。「もちむね~」と車内放送が聞こえる。用宗神社があったのでは?いやモチムネではなくムナカタのまちがいだと気付く。電車がホームに入る直前、右側に満開の桜が見えた。雨も小降りになったようだ。途中下車したことのない駅だった。急遽降りることにした。

駅の跨線橋を掃除していた人に「むかし城があった山はありませんか?」と尋ねる。「あそこの山頂にあったというが今は何もない。」行ってみようと思ったが、駅の出口は海側にしかない。遠回りをして踏み切りを渡ってまた駅に向かうしかない。とりあえず傘をさして桜がみえた線路際まで歩く。東海道線と新幹線が並行していた。電車と桜の写真を撮ろうと立ち止まって電車が来るのを待つ。数分おきくらいで電車が通る。雨の中、傘を差してカメラを構えるのは不審に思われるかもしれないが、周囲に人影はない。

駅ホームの名所案内板に、大崩海岸2km、用宗海岸5分の二つがあった。宝珠院の墓地を横切って歩くとすぐ海岸に出た。左手に浜辺が広がっていた。右手遠くに岬のように見えるあたりが大崩海岸なのだろう。その手前を海に張り出すような道路橋が見えた。さった峠越えのときに見た東名高速・1号線の道路を思い出した。

海岸線を北へ歩く。少し先から緑道が続いていた。用宗緑地という。左に「富士宮焼きそば」の看板があった。ランチ代わりに食べようと思って入ったが休みだった。海水浴シーズンのときにしか開かないそうだ。隣りが持舟窯というギャラりーになっていた。大崩海岸のことを聞いた。駿河湾越しに富士山が見える場所だが、いまは崩落して通行できなくなっているそうだ。駅裏の城址はモチムネジョウというが漢字は「持舟城」、むかし武田信玄の出城だったという。低いのでかんたんに登れる。地元では城山公園と呼んでいる。

※旅から戻って調べたら大崩海岸は廃線マニアのメッカのような存在だった。こちらに詳細な探検レポートがあった。

用宗緑地は幅20mくらいで海岸沿いの道路と並行して800mほど続いていた。草道なので歩くのがうれしい。人影は少ない。小雨の中を犬を連れて散歩している女性に出あった。犬は滅多に見ることのないグレイハウンドだった。脂肪率ゼロのスタイルのいい美しい犬だった。写真を撮らせてもらった。

雨の中を海岸沿いに歩いた。誰もいない海。道が尽きるあたりの駐車場で二人連れに出会った。写真を撮らせてもらい、あれこれと長話をしてしまった。ひとりは興津出身で川の近くだという。さった峠を歩いたときの記憶がよみがえる。川を渡ったところで海岸に降りると狭い浜辺に女性が一人たたずみ海を眺めていた。失恋でもしたのかな?写真の構図の中に入るので了解を求めるために声をかけて話をすると興津に祖父母の家がありよく遊びにくるということだった。そんな話を二人にした。横浜と奈良を行き来して途中下車の旅をしているというと、もう一人の友だちは横浜XX区に住んでいるという。私の自宅からすぐ近くのXX団地だ。偶然にしろ何かしらのつながりがあるのはうれしいものである。人は何かのつながり、縁をもって生きているのだ。一期一会が織り成す人間のつながりを考えさせられた。

用宗漁港への行き方を教えてもらって彼女たちと別れた。漁港はさほど大きくない入り江の中にあった。雨がしとしと降り続く。数人の釣り人がいるだけの漁港は静かだった。何隻もの漁船が列を成して停泊していた。波止場でかもめ(だと思う)が数羽遊んでいる。写真を撮ろうと近づくと飛び去って漁船の縁に止った。港にはかもめが似合う。

漁港の直売所で釜茹でしらすを買い求める。富士宮焼きそばの代わりに食べて今日の昼食とした。販売所の人に持舟城への行き方を訊く。漁港から徒歩15分くらいだそうだ。 ※あとで調べると戦国時代は入り江が城山のすぐ近くまで入り込んでおり、今川水軍の根拠地の一つだったそうだ。

東海道線の踏切を渡ってすぐ左の細い道を線路沿いに200mほど歩くと浅間神社があった。その隣りから城山に登る道があった。雨足が強くなってきたので登るのは次の機会の楽しみに残して駅に向かうことにした。

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